HOME、もくじ   樹木名一覧  葉の図鑑  花の図鑑  実の図鑑
 画面の文字が小さいときは、メニューバー>表示>文字のサイズ、で文字
 を大きくしたり、または拡大レベルを125%にあげるなどしてご覧ください。


ウワミズザクラ  上溝桜

バラ科ウワミズザクラ属
学名:Padus grayana

別名:ハハカ、コンゴウザクラ、ナタヅカ、
    クソザクラ

  属名のPadusはイタリアのポー川を指す。種小名のgrayanaはAsa Grayの名から。Asa Grayは19世紀アメリカの著名な植物学者だが、来日したことがないのになぜ日本の植物に命名できたのか疑問が湧き調べてみた。その鍵はペリーの黒船であった。
  1853、1854年に来航したペリーの艦隊には複数のプラントハンターが乗船しており、日本の植物を採集しアメリカに持ち帰ったのであった。これらの植物を研究したのがAsa Grayである。この経緯について在ニューヨーク日本国総領事館のサイトに記事がある。
 
 
  以前島根県と広島県境の山地で満開のウワミズザクラに出会って以来、岸和田市内にもないものかと探していた。隣の和泉市の谷では見たことがあるのできっと岸和田市の山地にもあるはずと確信していたが、大沢町のシガ谷に入った時にとうとう本種に出会うことができた。見慣れてくると、シガ谷では図鑑の記述どおりふつうに見ることができた。相川町のモツ谷でもふつうに見かける。
  岸和田市の山地にもふつうに分布することはわかったものの花や果実をつける成木にはなかなか出会えず、花を撮影するには和泉市の父鬼町まで出かける必要があったのだが、2011年春に大沢町シガ谷でとうとう花をつける成木を見つけた。これまでに何度も歩いた場所だがこれまで気づなかったのは、この木がやっと花芽をつけるぐらいに成長したのだろう。

  ウワミズザクラの名は、昔材の表面に溝をほり亀甲を焼いて吉凶の占いに使ったことからウワミゾザクラが転訛してウワミズザクラになったとされる。
 別名ナタヅカは、材が粘り強く道具の柄に利用されたからという。クソザクラのありがたくない別名は、樹皮などに臭気があるからというが、まだためしてみたことはない。

  緑色の若い果実を塩漬けにしたものを杏仁香
(あんにんご)と呼び、新潟県や長野県では瓶詰めが売られている。熟した果実は果実酒にすればきれいな色に仕上がるものの、香りが強すぎるという人もいるらしい。
  材は良質で建築材、器具材、彫刻材に利用される。樹皮はヤマザクラなどと同じように樺細工に利用される。樹皮と根は、鳶色の染料にされる。
  民間薬としてつぼみの花穂を咳止めに用いるという。


 雌雄同株。


クリックすると、写真と説明にジャンプします。

樹形 環境 果実 樹皮 冬芽 仲間の樹木

樹形  落葉高木。高さ20m近くになる。
まだ若い樹

大沢町シガ谷で
2007.6月
若い個体
花期の樹形

大沢町
紅葉橋で
2011.5月
花期の樹形
春先の枝
花芽と葉芽が展開しはじめた

大沢町シガ谷で
2011.3月
春先の枝のようす
花期のようす

大沢町シガ谷で
2011.3月
花期
枝葉

和泉市父鬼町
鍋谷で
2007.6月
枝葉
果期のようす

和泉市父鬼町
鍋谷で
2013.7月
果期のようす
 環境  山地の日当たりのよい谷
   雌雄同株。 花期:4〜5月
新枝の先に長さ約10cmの総状花序を出し、多数の白い花をつける。花は直径約6mmで、30本ほどの長い雄しべが目立つ。雌しべは雄しべとほぼ同長。花にはよい香りがある。

花によるイヌザクラとの区別
ウワミズザクラの花軸下部には数枚の葉がつくが、イヌザクラの花軸には葉がつかない。
花期の樹形
                             大沢町シガ谷で   2011.3月
春先の枝
つぼみが成長してきた

大沢町シガ谷で
2011.3月
つぼみをつけた枝
春先の枝
つぼみが成長してきた

大沢町シガ谷で
2011.3月
つぼみ
つぼみ

和泉市
父鬼町鍋谷で
2008.3.18
つぼみ
      つぼみ

大沢町シガ谷で
2011.3月
つぼみ
つぼみ

和泉市
父鬼町鍋谷で
2008.4.12
4月の花序
花をつけた枝

大沢町シガ谷で
2011.3月
花をつけた枝
花序

大沢町シガ谷で
2011.3月
花序
満開の花序

和泉市
父鬼町鍋谷で
2009.4月
満開の花序
花序

大沢町シガ谷で
2011.3月
花序
満開の花序

島根県で
2004.5月
ビン洗いのブラシのような花序
雌しべは淡緑色で長い
雄しべは白く多数

撮影のため顔を近づけるとよい香りがする
花
花序の下につく葉

ウワミズザクラの花軸下部には数枚の葉がつくが、イヌザクラの花軸には葉がつかないことで区別できる。
花軸の下には葉が数枚ある
  互生。
葉身の長さは約9cmで、卵形〜長楕円形。質はややうすく、先は尾状に長く伸びる。ふちに細かく鋭い鋸歯があり、鋸歯の先はのぎ状。密腺は葉柄になく、葉身基部の最下の鋸歯が密腺となる。
図鑑では葉はふつう無毛とされるが、岸和田市の山地で見るものは葉の裏面は有毛で、葉柄にも毛が多い。平凡社「日本の野生植物・木本」には「まれに裏面の脈上に白毛が生える。」 とある。 
枝葉

和泉市
大野町の山地で
2010.6月
枝葉
葉の表

和泉市大野町の山地で
2010.6月
葉の表
幼木の葉の表

河合町鎌谷で
2011.6月
幼木の葉の表
葉の裏

和泉市大野町の山地で
2010.6月
葉の裏
岸和田市周辺の山地でみるものは葉の裏面に白毛が多い
とくに脈上に多い


和泉市大野町の山地で
2010.6月
裏面の毛
岸和田市の山地でみるものは葉柄に毛が多い 葉柄に毛が多い
葉芽の展開

大沢町シガ谷で
2010.3月
葉芽の展開
新葉の展開

大沢町シガ谷で
2009.3月
新葉の展開
鋸歯の先はのぎ状にとがる
鋸歯は鋭い
最下部の鋸歯は密腺になる 最下部の鋸歯は密腺になる
果実  核果。
直径約8mmの卵形で、夏に黒紫色に熟す。甘く、食べられる。

果実によるイヌザクラとの区別
ウワミズザクラの果実の基部には萼片は残らないが、イヌザクラの果実の基部には萼片が残る。
果実をつけた枝
   果実をつけた枝        大沢町シガ谷で   2011.7月
若い果実

和泉市父鬼町
鍋谷で
2007.6月    
若い果実
果実をつけた枝

大沢町シガ谷で 2011.7月
果実をつけた枝
果実

大沢町シガ谷で 2011.7月
果実
果実

大沢町シガ谷で 2011.7月
    
   核は卵形で先はとがる ( 画像 準備中 )
樹皮  暗紫褐色でなめらか。横に長い皮目がある。     
新枝に毛が多い

和泉市大野町の山地で
2010.6月
新枝の毛
樹皮は横長の皮目が目立つ 暗紫褐色の樹皮
        暗紫褐色の樹皮
      
    横長の皮目が目立つ
冬芽  長さ約5mmで卵形。無毛で、色はあかい。
   ( 画像 準備中 )
同属の仲間の樹木  
イヌザクラ  シウリザクラ(中部地方以北に分布)

HOME、もくじ   樹木名一覧  葉の図鑑  花の図鑑  実の図鑑


            このホームページ内の文章、画像の転載は禁止です。
            Copyright(c) 2010  Kigi@Kishiwada  All rights reserved.

inserted by FC2 system