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クヌギ 櫟、椚、橡 ブナ科コナラ属 学名:Quercus acutissima 別名:ツルバミ |
属名のQuercusは良質の材の意。種小名のacutissimaは最も鋭いの意。 クヌギは万葉の昔から私たちにとって有用な樹木である。木材を焼いて炭にしたり、椎茸栽培のほだ木にしたり、樹皮と殻斗を染料にしたりするなど、古くから生活に利用してきた文化がある。 また、こどもにとってもクヌギは親しみのある樹木である。カブト虫が集まる樹であり、大きなどんぐりを拾うことができる樹である。 万葉集でつるばみというのは、クヌギである。クヌギを使って染めたものをつるばみ染めといい、黒っぽく染まるという。この染めは、現在でも行われているようである。 図鑑などには東北地方以南の山地、丘陵地にふつうに見られると書かれるが、岸和田市の山地では意外に自生のクヌギを見ることがない。岸和田市に限らず里山などで見るクヌギは、木材や薪炭に持続利用するために人の手で植えられ管理されてきたものが利用されなくなって自然に帰った状態とも考えられる。 クヌギは中国原産とする説があることを最近知ったが、一方で 「原色日本植物図鑑・木本編」保育社1979 には 『瀬戸付近の鮮新世、京都や塩原の洪積世下部から化石が報告されている。』 という記述がある。他府県のクヌギの分布については詳しいことはわからないが、もともと日本の山地に野生するものかどうか現状では不明である。 岸和田市でこれまでにクヌギを見たのは三ヶ山町とんぼ池公園、相川町の道路沿い、加守町4丁目の空き地、西之内町中央公園内春木川沿いの4カ所ぐらいであるが、いずれも野生ではなくなんらかの形で人の手によるものと考えられる。 なお、西之内町兵主神社と中井町夜疑神社の社叢にクヌギの大きな木があると思っていたが、葉の裏面を調べてみると両方ともアベマキであることがわかった。時折愛知県岡崎市に知人を訪ねた際に雑木林に入ってみると、クヌギは見かけずアベマキがふつうである。それと同じように兵主神社と夜疑神社の辺りも古くはアベマキがふつうに生育していたのかもわからない。 クヌギとアベマキはよく似ていて葉の裏面の毛を見ないと区別できないことが多い。 雌雄同株。 |
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樹形 環境 花 葉 果実 樹皮 冬芽 仲間の樹木
葉の裏面によるクヌギとアベマキの区別
樹形 落葉高木。高さ15m、直径60cmになる。 |
冬の樹形 若い木の独立樹 和泉市春木町で 2009.2月 |
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枝葉 和泉市春木町で 2008.8月 |
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春になっても枯葉は枝を離れない 西之内町 春木川緑道で 2015.3月 |
環境 山野、公園 |
花 雌雄同株。 花期:4〜5月 |
雌花は新枝の上部に1〜3個つく、小さい。 雄花序は長さ約10cmで、新枝の下部にたれ下がり多数の雄花をつける。 |
雌花 | ||
雌花は新枝の上部につく 和泉市春木町で 2015.4月 |
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これはすでに若い果実になっている 和泉市春木町で 2009.5月 |
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雄花 |
冬芽がほころびて雄花序がみえてきた 和泉市春木町で 2014.4月 |
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葉 互生。 |
葉身の長さは8〜15cmで長楕円状披針形。質は紙質で、先はふつうとがる。平行脈の先は鋸歯に入り、芒(のぎ)状になる。 |
新葉 軟毛が密生する 大阪市住吉区で 2006.4月 |
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葉の表 和泉市春木町で 2010.10月 |
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葉の裏 和泉市春木町で 2010.10月 |
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葉の裏 和泉市春木町で 2008.8月 |
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托葉は線形で早く落ちる 和泉市春木町で 2014.6月 |
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落ち葉の裏面 三ヶ山町 とんぼ池公園で 2010.11月 |
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葉の形には変化がある 三ヶ山町 とんぼ池公園で 2010.11月 |
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鋸歯 側脈の先は針のように細い芒(のぎ)になる 8月 |
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鋸歯 上の写真のような鋸歯がほとんどだが、こんな鋸歯もある 9月 |
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裏面の毛 はじめ軟毛がある 5月 |
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これは毛深いタイプだ 和泉市春木町で 2015.4月 |
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この葉は毛が少ないタイプ 地蔵浜町 浜工業公園で 2010.5月 |
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裏面の毛 毛はかなり脱落した 7月 |
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裏面の毛 落葉時には無毛になり光沢がある 12月 |
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葉の裏面によるクヌギとアベマキの区別 |
新葉の裏面 | ||
クヌギの葉の裏 脈上に軟毛が多いが全体的には緑色にみえる |
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アベマキの葉の裏 裏面全体に星状毛が密生して白くみえる |
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落ち葉の裏面 | ||
クヌギの葉裏にくらべてアベマキの葉裏はつや消しのような感じがある | ||
クヌギの落ち葉の裏 新葉の時にあった毛は脱落して無毛になり光沢がある |
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アベマキの落ち葉の裏 密生する毛は落ち葉になっても残り白っぽくみえる |
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果実 堅果。 |
直径約2cmの球形で、2年目の秋に褐色に熟す。殻斗(総苞)は大きく、直径約3cmほど。総苞片は上のものほど長く、1cmほどある。 |
1年目の果実 まだごく小さい 和泉市春木町で 2010.10月 |
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2年目の6月を迎えた若い果実 和泉市春木町で 2014.6月 |
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2年目の夏を迎えた果実 この時期からぐんぐん大きく育つ 8月 |
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総苞片の色が変わってきた 8月 |
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ドングリがのぞいてきた イソギンチャクのなかにドングリが棲んでいるようだ 8月 |
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総苞片 9月 |
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堅果(どんぐり) |
どんぐりの上部に殻斗に収まっていたときの痕跡が線状に残る 右の小さいほうが12×16mm 堺市 大阪府立大学で 2010.11月 |
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このどんぐりは先端部に毛がみえない これは少し縦長だがもっと丸いどんぐりも多い 大きさは17×22mm 堺市 大阪府立大学で 2010.11月 |
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どんぐりの先端 下にみえる波状の横線は殻斗に入っていたときの跡だ |
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上から見ると | ||
基部は少し突出する 基部のほかに底、底部などの呼び方がある 少し専門的にはへそとも呼ぶらしい |
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樹皮 灰褐色。不規則な割れ目がある。 |
新枝の樹皮 灰白色の短毛が密生する 和泉市春木町で 2009.5月 |
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新枝の樹皮 短毛は脱落し丸い皮目が散生する 和泉市春木町で 2010.10月 |
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若い木 直径3cm | 成木の樹皮 直径15cm | |
成木の樹皮 直径30cm | 成木の樹皮の裂け目 | |
葉痕は半円形 葉痕のすぐ上にこの春開花した果実がみえる 小さいまま冬を越し翌年の夏から大きく成長する 和泉市春木町で 2010.10月 |
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冬芽 長さ約6mmの長卵形。 |
すでに冬芽が成長している 葉につく丸いものは虫こぶ 10月 |
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芽鱗のふちに灰色の軟毛が密生する 2月 |
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冬芽の芽鱗は20〜30枚ある 3月 |
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動きだした冬芽 和泉市春木町で 2014.4月 |
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同属の仲間の樹木 | コナラ属のなかで、総苞の鱗片が瓦重ね状に並ぶコナラ亜属を下に挙げた。 |
アベマキ ウバメガシ コナラ ナラガシワ、カシワ、ミズナラ(下の画像参照) カシワ、ミズナラは冷涼地の樹木だが、ミズナラは最近とんぼ池公園内の花木園に植えられたようだ。(2008.8月) |
ナラガシワ 葉身の長さが20cmほどある 奈良県宇陀市で |
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カシワ 岡山県蒜山高原で 2010.7月 |
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ミズナラ 鳥取県江府町 奥大山で 2010.7月 |
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ミズナラの葉柄はごく短い 岸和田市三ヶ山町 とんぼ池公園で 2010.11月 |
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