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スダジイ すだ椎 ブナ科シイ属 学名:Castanopsis sieboldii 別名:イタジイ、ナガジイ、シイ |
属名のCastanopsisはクリに似て異なるの意。種小名のsieboldiiは、19世紀に来日し日本の動植物を研究したドイツ人シーボルトの名から。 スダジイはツブラジイと同じように虫媒花で雄花はクリに似た強い香りがある。両者の区別点は図鑑にもよく書いてあるいくつかのポイントがあるが、それらとは別の視点として週刊朝日百科「世界の植物」朝日新聞社(1977)に次のような記述があるので紹介しておく。 「スダジイはツブラジイにくらべて幹のまっすぐなものは少ない。」(初島住彦) 堅果(どんぐり)は炒って食用にできるが、タンニンの量が少なく生でも食べることができる。日本に農耕が定着する前はツブラジイとともに重要な食糧だったとされ、縄文遺跡からも果実の遺体が出土している。 図鑑などに「スダジイは照葉樹林を構成する主な樹木で、花期には樹冠全体が雄花におおわれ山が黄白色にみえるほどである。」 とされるが、岸和田市の山地でそのような景観をなすのはツブラジイのほうだ。岸和田市の山地で見るシイはツブラジイがほとんどである。岸和田市内で野生のスダジイが見られるのは弥栄神社(八幡町)、矢代寸(やしろき)神社(八太町)であることを考えると、岸和田市域のスダジイの分布は海に近い平地だったと推測できる。 市内ではその他に、土生町今池公園に1株植えられている。春木川河口にある春木川緑道(下野町)でも2株見ることができる。別所町宮の池公園(岸和田警察署の裏)にも数本植えられているので手軽に観察することができる。しかし、これら春木川緑道と宮の池公園のものはスダジイとツブラジイの中間型と思えるもので、下に述べるようにシイノキとしておくのがよいだろう。これらのどんぐりはスダジイのような長い形ではない。 雌雄同株。 |
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スダジイとツブラジイの境界について | |
上に述べた岸和田市内で見るスダジイのなかで、スダジイの特徴をしっかりもつものは今池公園(土生町)のものと弥栄神社(八幡町)、矢代寸(やしろき)神社(八太町)のものである。 春木川緑道、別所町宮の池公園のどんぐりはツブラジイ(コジイ)との中間型ともいえる丈が短くずんぐりした形をしている。 このスダジイとツブラジイの中間型と思えるものについて、現在は削除された「大阪自然」のサイトに興味深い記述があったので引用すると、 『環境庁(1980)によれば、府下では典型的なスダジイの形状を有するものがみられず、むしろコジイに近く、両種の中間的形質をそなえるとし、生態面も含め厳密な区別が困難なことから、両種を単にシイとして取り扱い調査を実施している。』 春木川河口の緑道(下野町)に植裁されたスダジイに「シイノキ」の名札がつけられているのは、あるいはこのことを踏まえてのことかもしれない。 |
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樹形 環境 花 葉 果実 樹皮 冬芽 仲間の樹木
スダジイだが長くないどんぐり
樹形 常緑高木。 |
高さ20m、直径1mになる。 幹の中ほどでよく分枝し、丸い大きな樹冠をつくる。 |
樹形 公園に植えられた若い木 土生町今池公園で 2006.12月 |
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スダジイの樹形は太い枝がよく分枝する これに比べてツブラジイの幹はまっすぐに伸びる 八幡町弥栄神社で 2010.2月 |
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枝葉 (上の写真の木) 2006.12月 |
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枝先 葉が厚くツバキに似た感じがする 奈良市奈良公園で 2009.3月 |
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枝葉 土生町今池公園で 2010.2月 |
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果実をつけた枝 別所町 宮の池公園で 2009.9月 |
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環境 山地、公園 |
花 雌雄同株。 花期:5月下旬〜6月 |
雌花序は新枝の上部に長さ約8cmの穂状花序を出し、緑色の雌花がいくつもつく。雌花は球形、花柱は3個。上部に雄花をつけることがある。 雄花序は新枝の下部に長さ約10cmの花序を出し、黄白色の雄花が多数つく。 |
花序の展開 兵庫県淡路島で 2007.4月 |
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花序の展開 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.4月 |
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雌花序と雄花序 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 白くて長いのが雄花序 短いのが雌花序 別所町 宮の池公園で 2007.4月 |
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雌花 | ||
雌花序 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2007.4月 |
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雌花序 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.6月 |
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雌花序 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.6月 |
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雌花序の上部に雄花がつく例 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.6月 |
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雄花 | ||
雄花序 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.4月 |
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雄花序 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2005.5月 |
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雄花序 雄花は半球形 雄しべは12本が 基本 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2005.5月 |
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雄花序 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.6月 |
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雄花 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.6月 |
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葉 互生、2列に並ぶ。 |
葉身の長さは5〜15cmで広楕円形〜広披針形。やや厚い革質。 先は尾状に長く伸び、鈍頭。ふちは全縁または上半部に波状の鋸歯がある。葉柄の長さは1cmほど。 |
枝葉 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.1月 |
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裏面が金色っぽくみえる枝葉 八幡町弥栄神社で 2010.2月 |
葉の表 土生町今池公園で 2010.2月 |
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鋸歯のある葉(表) (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 土生町今池公園で |
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鋸歯がはっきりした葉(裏) (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 土生町今池公園で |
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果実 堅果(どんぐり)。 |
長さ約1.5cmの卵状長楕円形で鋭頭。翌年の秋に褐色に熟す。卵形の殻斗(総苞)に包まれるが、熟すと殻斗は3裂し果実(どんぐり)が出てくる。 |
年を越した若い果実 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.1月 |
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年を越した若い果実(どんぐりの赤ちゃん) (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2010.1月 |
若い果実 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2009.6月 |
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若い果実 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2009.7月 |
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果実 (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2009.9月 |
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今年は豊作だ (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2009.9月 |
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どんぐりは殻斗につつまれる 殻斗(総苞)には突起状の鱗片(総苞片)が環状に並び灰褐色の短毛が密生する (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 10月 |
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裂けはじめた殻斗 殻斗は3裂する (ツブラジイとの中間型と思えるもの) 別所町 宮の池公園で 2009.9月 |
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殻斗は3裂する 今池公園のスダジイ |
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殻斗に入ったまま落ちた果実 八幡町弥栄神社で 2007.11月 |
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どんぐり | ||
スダジイのどんぐり 大きいもので8.5×18mm 八幡町弥栄神社で 2007.11月 |
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どんぐりの先はとがる 毛が多い 大きさは10×20mm 今池公園のスダジイ 2006.12月 |
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上のどんぐりに比べて毛が少ない 大きさは8×18mm 八幡町弥栄神社のスダジイ 2007.11月 |
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基部はウバメガシのどんぐりに比べると面積が大きい 基部のほかに底、底部などの呼び方がある 少し専門的にはへそとも呼ぶらしい 弥栄神社のもの |
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どんぐりの底 今池公園のもの |
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どんぐりの先はしだいに細くなる 弥栄神社のもの |
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スダジイのようだが長くないどんぐり | |
ページの冒頭に書いたように別所町宮の池公園と春木川緑道にスダジイが植えられている。枝、葉のようすや樹皮はたしかにスダジイなのだが、それらのどんぐりはスダジイ特有の砲弾の形ではなくツブラジイとの中間型と思えるものだ。 |
形はツブラジイに似たどんぐり 大きいほうは10×15mm まんなかの小さいものは8.5×12mm 別所町宮の池公園のスダジイ 2009.1月 |
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春木川河口部緑道のスダジイ 大きいほうは8.5×15mm 2011.3月 |
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樹皮 |
黒褐色、成木ではたてに深くわれる。若い枝は褐色をおびた灰緑色で小さな皮目が多い。 |
直径13cmの若い木 | 直径20cmの成木 | |
たてにわれた樹皮 直径15cm | 深くわれた成木の樹皮 直径35cm | |
このような赤味が強い枝もよくみられる | ||
冬芽 扁平な長楕円形。 |
冬芽 芽鱗のふちに毛がみえる 1月 |
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冬芽は扁平 1月 |
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冬芽は扁平 上から見た時の幅に対して横から見ると厚みがないことがわかる 3月 |
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冬芽 2月 |
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展開しはじめた冬芽 3月 |
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展開しはじめた 冬芽 3月 |
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同属の仲間の樹木 ツブラジイ(コジイ) |
スダジイにはヌカジイ、マルバジイ、ヒメジイなどの変種がある |
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