HOME、もくじ   樹木名一覧  葉の図鑑  花の図鑑  実の図鑑
 画面の文字が小さいときは、メニューバー>表示>文字のサイズ、で文字
 を大きくしたり、または拡大レベルを125%にあげるなどしてご覧ください。


アブラチャン   油瀝青

クスノキ科クロモジ属
学名:Lindera praecox

別名:ムラダチ、ズサ、ヂシャ、ゴロハラ   

  学名のLinderaは、スェーデンの植物学者J.Linderから。 praecoxは早咲きの意。

 幹からひこばえを生じやすく叢生するところからムラダチの別名がある。油分が多く生木でもよく燃え、果実から油をしぼり灯用にしたという。チャンとは日本語らしくない語だが、別項を参照されたい。
  葉をもんだり、枝を折ると香気がある。大きな樹では仮軸分枝により枝葉が階段状にひろがり、樹形の美しい木のひとつである。
  材は粘り強いので輪かんじきを作るのに利用したというが、今では金属製のスノーシューが幅を効かせているので、一般には作られないのであろう。

  岸和田市では和泉山脈の麓にあたる相川町、塔原町、大沢町の谷に入るとふつうに見る。とくに大沢町シガ谷では林道のわき、川岸にその端正な樹形を多数見ることができる。

  雌雄異株。


仮軸分枝とは → 主軸の先端部が伸長を停止し、次の年は腋芽が替わって主軸として伸長していくこと。仮軸分枝をくり返すと枝葉は扇状に広がった樹形になる。

チャン(瀝青)とは
→ 国語辞典の広辞苑にチャン【瀝青】は chian turpentineの略とあり、外来語とする。チャンの語をこれまでに見聞きしたことがなく意味がつかめなかったが、2013年出雲大社の遷宮に関するTV番組で「ちゃん塗り」の語が耳に留まった。出雲大社の大屋根修造に「ちゃん塗り」の工法が使われたというのだ。直感でアブラチャンのチャンはこれだ!とひらめいた。
  岩波古語辞典1974でも「チャン」は外来語の扱いで、油桐の油に松脂を加えたもの、近世防水用の塗料とする、とある。出典に「板の間へチャンを塗り候」(鈴木修理日記 寛文十年1670)が挙がっているから、江戸時代初期には「チャン塗り」の語が使用されていたのだ。
  これらのことから、アブラチャンのチャンは木に油分を多く含むことからきた名前だといえよう。


クリックすると、写真と説明にジャンプします。

樹形 環境 果実 樹皮 冬芽 仲間の樹木

花によるアブラチャンとダンコウバイの区別

樹形  落葉低木。
高さ5mほどになる。図鑑などでは叢生(株立ち状)するとあるが、岸和田市の山地では叢生でないものもよく見る。
樹形
仮軸分枝により枝が階段状に広がる

大沢町シガ谷で
2007.6月
樹形
叢生(株立ち)した個体

和泉市父鬼町
白川谷で
2008.4月
株立ちの樹形
枝先も美しい

和泉市父鬼町
鍋谷で
2007.6月
枝葉
果期のようす

和泉市父鬼町
白川谷で
2013.7月
果実をつけた枝
 環境  山地の谷間などのやや湿ったところに多い
   雌雄異株。 花期:3〜4月。    
葉が開く前に淡黄色の花が数個集まってつく。花には半透明の花被片が6個ある。雌花には、雌しべ1個と仮雄しべ9個がある。雄花には雄しべが9個ある。

   雌花 
雌株の花は小さいので遠目からだと花に気づかないことがある

和泉市父鬼町
鍋谷で
2008.3月
雌花をつけた枝
雌花
花の中心に子房がみえる

和泉市父鬼町
鍋谷で
2008.3月
雌花

   雄花 
雄花は大きく華やか

和泉市父鬼町
白川谷で
2008.3月
雄花
雄花の雄しべは9本

和泉市父鬼町
白川谷で
2008.3月
雄花

    花によるアブラチャンとダンコウバイの区別
岸和田市の山で早春にみる黄色の木の花には、アブラチャンとダンコウバイがあるが、よく似ている。これらの区別は、花序の下を見るとよい。
アブラチャンの花序には枝とのあいだに柄(花序の軸)があるが、ダンコウバイの花序の下には柄(花序の軸)がない点で区別できる。
アブラチャンの花序の下には花序軸がある アブラチャンの花序の下には軸がある
ダンコウバイの花序の下には花序軸がない ダンコウバイの花序の下には軸がない
  等間隔に互生する。
葉身の長さは4〜8cmで卵形または楕円形。先はとがる。質はうすい。縁は全縁で両面とも無毛であるが、葉裏脈上に短毛があるものがある。葉の表は緑色、裏は灰白色で、葉柄の基部が赤い。
左ー葉表
右ー葉裏
葉の表と裏
葉の表

大沢町シガ谷で
2010.6月
葉の表
葉はふつう全縁だが鋸歯がみられるものもある

大沢町シガ谷で
2010.6月
鋸歯がある葉
葉の裏

大沢町シガ谷で
2010.6月
葉の裏
葉の裏

大沢町シガ谷で
2009.10月
鋸歯がある葉
葉柄は無毛で赤味を帯びる

大沢町シガ谷で
2009.10月
葉柄は無毛
新葉の展開

和泉市父鬼町
白川谷で
2008.4月
新葉の展開
果実  液果。       
直径約1.5cmの球形で、9〜10月に黄褐色に熟す。表面に皮目がある。果柄の先はやや太くなる。中に1個の種子が入る。
若い果実

和泉市父鬼町
鍋谷で
2007.6月
若い果実
若い果実

和泉市父鬼町
白川谷で
2013.7月
若い果実
果実

大沢町シガ谷で
2009.10月
成熟してきた果実

種子
球形で赤褐色
基部から先の方へ低い稜がある

稜とは → 紙の折り目のような線状の隆起
樹皮    灰褐色。小さな丸い皮目が多い。    
若い枝は緑色


大沢町
シガ谷で
2010.6月
枝の樹皮
樹皮 樹皮
    灰褐色の樹皮
岸和田市の山地で見るものは赤みがかったものも多い
冬芽    葉芽は細い紡錘形で赤い。花芽は球形で短い柄がある。
冬芽
すでに来春の準備ができている

奈良県曽爾村で
2006.10月
冬芽
花芽は球形で枝との間に軸がある

先のとがった芽は葉芽

大沢町シガ谷で2007.10月
花芽と葉芽
春になり柄が伸びてきた

和泉市父鬼町
白川谷で
2008.3月
花芽と葉芽
          
同属の仲間の樹木  
クロモジ     ヒメクロモジ    ヤマコウバシ  カナクギノキ
シロモジ    ダンコウバイ
カナクギノキ

和泉市
父鬼町鍋谷で
2007.6月
カナクギノキ
カナクギノキ
花と新葉

和泉市
父鬼町鍋谷で
2008.4月
カナクギノキ・花
シロモジの葉

和歌山県
野迫川村で
2005.6月
シロモジの葉
クロモジ

兵庫県
篠山市の山地で
2007.10月
クロモジ

HOME、もくじ   樹木名一覧  葉の図鑑  花の図鑑  実の図鑑


          このホームページ内の文章、画像の転載は禁止です。
          Copyright(c) 2010  Kigi@Kishiwada  All rights reserved.

inserted by FC2 system